マネージングディレクター
中島 友之

MBA / CFA / CMA

東京大学経済学部卒業後、1998年野村アセットマネジメントに入社。2005年より日本株式運用。海外の政府系基金、企業年金、ファンド向け100~3000億円の一任勘定を運用受託し、日本の主要企業800社以上に対し取材、財務分析に基づく長期事業戦略評価を行い投資実行。
2021年より野村アセットマネジメントの経営/M&A戦略を立案。
2021年より当社参画。

Q.1 日本のヘルスケアの中でも「在宅医療」「医療ICT」「不妊治療」という3領域に特化した理由はなぜか。特に、どのような”構造的な投資機会”に注目しているか。

ー この3つに共通している課題は”供給力と生産性”。人的資本が中心となるヘルスケアセクターにおいて、在宅医療への方針転換や不妊治療の保険適用で高まる各分野で高まる需要に労働供給が追いついていない。拡大する需給ギャップに対し供給力及び生産性向上が求められている一方で、その課題に立ち向かう取り組みはいまだ十分とは言えず、我々が日本初のヘルスケア特化型PEファンドとして支援を開始した。国策としても特に注力されるこの3領域で、事業者の変革を先導したい。

Q.2 ヘルスケア投資のレバレッジポイントはどこか。

ー 経営に対する意識改革。ヘルスケアは専門職が多く、サービスの質や目の前の患者ひとりひとりへ向き合う意識が高い一方で、地域の医療課題に対してどのように事業を経営していくかという俯瞰的なビジョンが欠けていることも多い。細かいところでは、利用者に対する直接的なサービス以外、例えば事業の収入につながる地域の関係各所に対する営業活動、間接業務を適時適切に終え事業所全体の労働時間の効率化につながる各種報告書の記入といったことは後回しになってしまいがちである。経営状況が悪いと、当然人や設備への投資も回らなくなる。経営を改善し、キャッシュフローや利益率を高め、新たな投資やICTの導入も可能になり、より多くの利用者に効率的にサービスが提供できる、良い職場環境・良いサービスへの好循環が生まれる。

Q.3 PMIにおいて大切にしているKPIは何か。

ー 従業員1人あたりの利用者数。ヘルスケアセクターは診療報酬等で利用者一人当たりの単価が安定しており、他社と比べて従業員1人あたりの利用者数や費用効率で上回れるようにPMIを進める。従業員教育の充実でサービスの質を向上させ、労働環境を改善し勤続年数を長くすることで、人材紹介会社等への採用コストを抑制しつつ、従業員1人あたりの利用者数を伸ばしていく。

Q.4 生産性向上において、うまくいかないケースに共通する特徴は何か。

ー 現場への理解不足。現場の業務とITリテラシーの両方に精通した専門家によるPMI計画の立案及び実行が不可欠。DXの導入なり開発においては特にトップダウンでは現場の理解がなければシステムが想定通り使われることはない。ヘルスケア専門家集団である我々の介入による意義は大きい。

Q.5 ヘルスケアならではのバリューアップとして何を意識しているか。

ー 現場が主体性を持つような働きかけをすること。医療介護の現場に関わっている人間に経営への意識を高め、ボトムアップで事業を改善する組織に変える。日本PMIパートナーズが実施する投資先の課題に対応する分科会という組織横断のプロジェクトチームでは投資先の若手を積極的に登用して、人を育てる仕組みづくりをしている。
中小企業によくあるトップダウンの体質、創業者や社長の指示待ち体質を改め、現場が各方面のKPI、例えばサービス提供のコスト意識や組織体制づくり、サービス改善等について、自律的に改善を進めていくことが中長期の事業改善に不可欠と考えている。

Q.6 LPとして特に注目すべき市場環境の変化は何か。

一つは、在宅系の診療報酬。例えば2024年改定の訪問介護の基本報酬引き下げなどについては投資家から不安視された部分だが、これは在宅系の報酬全体が下がることではない。病院中心の医療から地域包括ケアへの移行は、国としての方針であることに変わりはない。当該改定においても、処遇改善加算の加算率を高くすることで実質的なプラス改定を目指すもので、在宅事業への報酬の上昇基調に変わりはない。2026年の臨時報酬改定での考え方は、対物から対人へのシフトの加速といえる。これまでも設備や箱への評価を抑制し、訪問診療、訪問看護、多職種連携、重度者対応など、人が関与するケアの評価を高める改定が行われている。これは、病床機能再編や医療費抑制と整合的であると同時に、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるという政策目標に直結する。
このように、長期的な制度設計として「対物から対人へ」「施設から在宅へ」という流れが明確であることから、2026年改定においても在宅医療・在宅系サービスへの政策的な追い風は一段と強まると見込んでいる。

他に、不妊治療についても令和4年(2022年)の保険収載から一般化が進み、実際に2023年の出生児の9人に1人が不妊治療による出生となっている。一方で、胚培養士等の不妊治療人材や薬剤等が十分に供給されていない状態であるため、スピード感のある投資や経営支援が求められている。

Q.7 最後に、「なぜ今日本のヘルスケアPEなのか」を一言で表すとしたら。

ー 先進国の最大課題フロンティアへの投資機会。
「我々の2号ファンドは、先進国の最大課題フロンティアへの投資機会です。」